5.津軽の鉄道めぐり


【津軽鉄道 風鈴列車は行く】

青森で奥羽線に乗り換え川部駅に到着。時刻は11:56。この後13:09発の五能線に乗り換える予定である。1時間以上待ち時間があるので、途中下車して駅の外に出てみた。この駅は奥羽線と五能線の分岐駅でもあり、かつて弘南鉄道黒石線の始発駅でもあったので、蕎麦屋くらいあるだろう。

・・・・駅前には古びた旅館1軒とタクシー会社があるだけだった。店が1軒も無い。小さな売店すら無い。この待ち時間に津軽蕎麦をと予定していたのに・・・。しょうがないので駅前の自動販売機でジュースでも飲もうと思った。・・・・全部売り切れだった。・・・・メンテすらしてないのか。駅前には常に1台づつタクシーが止まっていて列車から降りてくる人はこのタクシーか、迎えにきてもらった車でどこかへ消えてゆく。常に駅周辺に居るのは駅員さん1人、入れ替わりのタクシー運転手1人、ヌマタイガーの計3人だけ。どうして自分はここにいるのだろう?不思議な気分にかられた駅であった。

大分長く感じた1時間だったが、定時に到着した五能線で五所川原へ向かった。ここはストーブ列車で有名な津軽鉄道の始発駅。もちろん7月にストーブ列車は無いが、秋には鈴虫列車など趣向を凝らした列車を走らせている。

いざ津軽鉄道線に乗った。夏場の津軽鉄道は風鈴列車だった。とっても風流である。

 

ここで少し旅行記から脱線して。

 

【もしも津軽鉄道が!コーナー】

--その1:もしも夏場にストーブ列車を走らせたら!--

車内は当然サウナ列車と化す。そして駅の案内版はこんな風になる。

・ヘルストレイン運行中。乗車の際は水着を着用ください。

・津軽鉄道乗車証明付き水着1000円販売中(旅の記念にもどうぞ)

・津軽鉄道ロゴ入りタオルセット700円販売中(残り少なし!今がチャンス!)

・駅構内シャワー使用1回500円

・注意事項:往復での連続乗車は危険を伴ないますのでご遠慮ください。

 

--その2:もしも秋の鈴虫列車の鈴虫が車内放し飼いだったら!--

車内の床は本物の芝生となる。そして駅の案内版はこんな風になる。

・世界初、秋月を見ながら虫の音とレール音のコラボが楽しめます。夜間のみの運行ですのでご注意ください。

・津軽鉄道乗車証明付き虫かご1000円販売中(購入の方に限り乗車中は鈴虫採り放題です!)

・津軽鉄道写真付き昆虫標本2000円販売中(残り少なし!今がチャンス!)

・かゆみ止めスプレー500円(車内では蚊も発生しますので持っていると安心です。)

・注意事項:鈴虫が逃げてしまいますので窓の開閉はご遠慮ください。芝刈り機の持ち込みは禁止とさせていただきます。

 

あー、少しどころか思いっきり旅行記から脱線してしまった。

さて、津軽五所川原駅を出発した風鈴列車は津軽平野を進む。

ヌマタイガーは途中の金木という駅で降りる予定である。この駅には引込み線があり、そこに鉄道ファン的レアな古い車輌が停車している可能性があるからだ。停車していた場合デジカメで撮影し、この駅で交換する列車に乗り換えてすぐに五所川原に戻る予定である。1時間に1本しかないこの鉄道、戻る列車に乗り遅れたら、この後の予定が急遽変更になってしまう。時刻表によると金木駅到着は14:26、戻る列車は14:27発車である。与えられた時間は1分。ホームが対面式なことは調べてある。つまり以下の動作を1分以内に実行しないと乗り遅れることになる。

降りたら一旦踏み切りを渡って上りホームに移動、引込み線に停留している車輌の前後等を撮影し、上り列車に乗車。

もしも踏み切りが降りたままだったら”1時間待ち”というスゴロクでいう1回休み状態である。

風鈴列車は金木駅に近づいた。緊張の瞬間である。座席から車輌の一番前の運転席脇に移動して前方に迫りつつある金木駅に停車中の車輌を確認しながら、駅の作りをチェック。

な、なんか右側の引込み線に想定外の列車が止まっている。駅構内の踏み切りは手前にある、乗り換える対向列車の姿はまだ無い。

風鈴列車は金木駅に到着、運転手さんにキップを渡し、小走りで踏み切りを渡り対向ホームへ。とりあえず対向車はまだ到着していなかったので引込み線に留置されている車輌の両端を撮影した。

そんな車輌はヌマタイガーをあざ笑うかのようにベロだしてやがった・・・。くっそー。

 

撮影をしている間に上り列車が到着。すぐに乗車して五所川原に戻った。地方鉄道はほぼワンマンカーなので車内で整理券をもらって降りる時に精算するシステム。改札を出る手間が無いことが幸いした。


【弘南鉄道弘南線 黒石・田舎館へ】

五所川原からJRのリゾート快速で弘前に移動。時刻は15:50。予約している帰りの寝台列車あけぼのが大鰐温泉を出る時刻は18:57。帰りの東京までの寝台列車あけぼの出発まであと3時間ある。

下の図で赤い矢印が予定経路。現在、図の真ん中の弘前に到着。

計画ではここから一旦右下の黒石に行ってから、弘前に戻り、乗り換え時間が11分しかない1キロ離れた中央弘前へはタクシーで移動(赤い点線部分)し、大鰐線に乗って津軽大沢で一旦下車、30分後の列車で大鰐へ。この計画通りだとあけぼの発20分前に大鰐温泉到着の予定だ。さて、この計画通りに移動できるのか?時間的に無理があるんじゃ・・・ 。

弘前から弘南鉄道弘南線で黒石まで移動。ここで黒いラッセル車を撮影して20分後の弘前行きの戻る列車に乗車。

 

この後弘前まで戻って大鰐線にも乗る予定でキップも買っていたが、途中の”田舎館”という駅でいきなり下車した。”でんしゃかん”と読みたくなるこの駅は”いなかだて”と読む無人駅だ。

無人の駅舎の中はくもの巣と大量に飛んでいる小さな虫がいた。なるべく息をしないで駅舎から外へ出て少し歩いてみると緑が一面に茂っていた。地名の通りの田舎であった。

 

突然下車した訳は”どらえもん”であった。駅から10分ほどの場所にこんな保存列車があったからだ。右下の画像は黒石線現役時代当時の車輌画像だが、色こそ違えど”どらえもん”も形は同じ。廃止になった黒石線を走っていたディーゼルカーだ。とってもカラフルな姿になっていた。

 


【寝台特急あけぼの 上野へ】

田舎館で一旦下車したため、東京への帰りの寝台特急”あけぼの”は弘前から乗車することにした。持っていたキップは大鰐温泉から乗車のものだったので、JR弘前駅で区間変更の手続きをした。距離は12キロほど長くなるのに金額は同じだった。長距離のキップって大雑把な勘定だったのね。

弘前駅で巨大リンゴを眺めていたら寝台特急あけぼのが入線してきた。ワクワクである。だって、客車寝台の個室って初めて乗るんだもん。

 

席は2段式B個室の上段だ。開け方の難しい扉をようやく開けて、身をよじって個室内にある3段の階段を登った。この屋根の真下の一角がこれから上野まで12時間の生活の場となるのだ。この部屋が車輌の左右両側に並び、真ん中に通路があるのだから、かなり狭い。でも窓はある。

左下の画像は個室入り口から青森方面を写したもの。左奥にあるピンク色の物体は可動式の背もたれ。右下の画像は青森方から入り口を写したもの。右下に3段の階段があり、寝る時は木造の折りたたみ床とピンク色の折りたたみマットを右側の階段の上に開いて、ベッドのできあがりである。画像の下側に写っているテーブルも折りたたみ式。これらを作る作業はとっても楽しいものだ。

 

ところで、弘前を18:46発あけぼのに乗ってB個室の作りを楽しんでいたのはいいが、夕食はどうする?弘前駅でビールは買ったが、駅弁が見つからなかったので食べ物は買っていない。今朝函館を朝食抜きで出発し、昼食に津軽蕎麦を食べようと思っていた川部駅は店が一軒も無かった。あけぼのは食堂車が無いので車内販売で購入するつもりだったが、車内の販売案内は一向に無い。

車内販売のおねーさんを探して進行後ろ方向の車輌に向かって徘徊するヌマタイガー。何両か進むと車輌のドアは”荷物室”となっていた。ここで一番後ろだ。向きを変え進行方向に徘徊した。10輌ほど進むと最後のドアは女性専用ゴロンとシート車輌だった。ここから先は入れないしここまで車内販売のおねーさんはいなかった上にジュースの自動販売機さえ無かった。ま、まさか寝台特急なのに車内販売すら無いのか?

ちょうどその時、女性専用ゴロンとシート車輌のデッキに白い帽子をかぶった制服姿の車掌さんがいたので、聞いてみた。

ヌマタイガー「あのー、車内販売ってこの列車あるんですか?」

白い帽子をかぶった車掌さん「私もわかんないですよ。」

ヌマタイガー「え?・・・(車掌なのに?)」

白い帽子をかぶった車掌さん「私も探しているんですが、ここから先は男性は入れませんし、どうしようもないですね。」

ヌマタイガー「??・・・」

この後白い帽子をかぶった車掌さんは客室であるゴロンとシート車輌の隣のB寝台の端っこの下段に座った。

その時悟ったヌマタイガーであった。うっわぁー!はずかしー。この人車掌じゃなくって乗客だ!

しかし自衛官だか、警察だか、消防だかよくわかんないけど、そんな紛らわしい制服に帽子かぶったまま普通上野行きの寝台列車に乗るかよー。※実は青森から羽後本荘までB寝台は昼間特急と同じ料金で乗れるので、ゴロンとシート車輌の隣のB寝台の一番前から指定されるらしい。このおっちゃんはめんどくさがりなのか制服のままで乗ったと思われる。

まっ、まあいいか。こんなこともあるよな。誰にも迷惑かけた訳でもないし・・・・。そして自室に戻った。しばらくすると本物の車掌さんが検札に来た。

ヌマタイガー「車内販売はまだあるんですか?」

本物の車掌さん「あー、会社が違うんであんまり分からないんですが、人によってはもう来ないかもしれません。さっき先頭の女性専用車に入っていきましたので聞いてみます。」

・・・・まだ夜7時くらいなのに。12時間くらいの長距離列車なんだから車内販売って当たり前にあるのかと思った。他の個室乗客も同じことを車掌さんに聞いていた。

しばらく個室でゴロゴロしていると女性の声が聞こえた。「・・・と・・・・はー・・・」

空けるのが難しい個室ドアを慌ててこじ開けて「すみませぇーーーーん!」と大声を出した。ワゴンを押す女性は真下にいた。ヌマタイガーもう必死である。一旦寝台を作るとたたまない限り階段が使えないので寝そべって上から通路を覗き込む状態になるのだ。

危なかったが、やっと増量のビール2缶とサンドウイッチを購入できた。おねーさんに聞いてみると今日はこの後後ろに行って戻ってくる20:30が最後だと言っていた。一応食べ物をGET、満足しJR寝台列車の浴衣姿となったヌマタイガーの画像である。

さあ後は上野に向かって列車は漆黒の世界を走るのみ。まだ夜8時頃だから寝るには早い。上段個室窓からの風景は満月に近い月の光と信号の光。デジカメでこれを撮ったらどうなるんだろう?

なんか面白い画像になった。こりゃまるでスターウォーズみたいだな。

デジカメで夜空の写真を撮っているうちにさすがに眠くなった。時刻は0:49、新発田を発車、もう新潟だ。

こうして5日目早朝、あけぼのは上野に到着した。

--完--