釜山旅行記
★9月
7日 (土) 三日目 (前半)
朝11時起床。もう昼と言っていい。
ホテルのチェックアウトが12時というのは有り難い。それでなけりゃ死んでる。
窓を開けると、おぉー、海が見えるじゃないか。なにげにオーシャンビューだぞ。
これで1部屋6千円はやっぱ安いな。ラッキー!
しかしこの砂浜である事件が起きていた
12時にチェックアウトしてロビーへ向かうと、岩崎(夫)さんが先に座っていた。
岩崎さん「沼田さんがいない……。」
え?いない?
しかしこの時、中澤はあまり本気にしていなかった。
たぶん先にみんなの所へ行ってるだろう、くらいに思っていたのだ。
だが、海の家に行ってみてもいない。ホテルの方は掃除のおばさんが来ていたようだからもういないと思う。
「でも、酔っ払ってベットの下にいるかもよ」
「とりあえず海岸に打ち揚げられてないか見てみます?」
さすがに中澤も心配になってきた。
とりあえず岩崎さんがホテルにもう一度様子を見に行くことになり、中澤はお留守番。
この時、12時10分頃。ここに「釜山行方不明者緊急捜査本部」発足。沼田大捜査線が始まった。
本部で待っていると、日本人留学生の阿部さんが
「海岸探しました?」
と真顔で聞いてくる。
中澤「ほんとにいたら恐いから、見に行ってない。」
「そうですか」
と言いながら、探しに行く阿部捜査官。
だって、まさかねぇ〜。
12時20分過ぎ。木村捜査官より第一報が入る。
木村捜査官「いたいた!海岸で寝てた!カメラ持ってこい!」
何!?中澤はカメラを持ち急いで現場検証へ。
いた!いました!
シャッター・チャーンス!!よし、これで証拠はおさえた。
まずカバンの中身と金をチェックする岩崎捜査官。
沼田さんが見つかったのは、すぐ目の前の砂浜だった。
「なんだ、ずいぶん狭い捜査網だったな……。」
砂浜に横たわるその姿はさながら「海岸に打ち揚げられた水死体」そのものだった。
岩崎、阿部、木村、中澤の4名の捜査官に見守られてノロノロと起き上がる沼田さん。
沼田さん「太陽がまぶしい…。」
当たり前でしょ、屋根無いんだから。
ていうか、なんでそんな眩しい所で寝てられんの?
トンネルを抜けたら雪国というのは聞いた事があるが、「目覚めたら目の前は海だった」なんて
なかなか出来ない体験である。
考え様によっては気持ち良さそうなVIPな環境に、若干の羨ましさを隠せない岩崎捜査官であった。
確かにこれは昨日の温水ウォーターベットより暖かくて、寝るには気持の良すぎる環境
でした。そうそう、砂風呂というやつに近い。みんなも釜山に行ったらこの砂浜で寝て
みよう!
この時中澤は、いろいろと突っ込みたかったが、あまりの驚きに何も言えなかった。
これにて沼田大捜査線は終了。事件解決まで約15分である。
第一発見者は岩崎(夫)さんだった。彼の話を聞いてみよう。
最初に発見した時、沼田さんは壁側に背をむけて海の方に向いて横になっていたそうだ。
「目を疑うとは、まさにこの事だと思った」
という岩崎氏。ちょっと見ただけでは生死の判別がつかず、一瞬恐怖を感じたらしい。
少し離れた所から10秒ほど観察した後、本人であることを確信し、一気に揺り起こした。
「沼田さん!沼田さん!」
生きてた……。
岩崎氏「俺、思わずカバンの中身調べちゃったよ。」
私達が見た時は、岩崎さんは沼田さんのカバンの中身をすかさずチェックしていた。
そう。沼田さんのカバンには、みんなから集めて韓国ウォンに両替したお金がすべて入っていたのだ。
それを沼田さんは背後に放り出したまま眠っていたそうだ。
一歩間違えたら文無しである。治安の良い所で助かったよ。
昨夜、というより今朝5時頃に、最後に海を見てホテルに戻ろうとした沼田さん。そこで記憶は途切れている。
まだ道路に近い方にいたから良いものの、これが波打ち際だったら、文句なしに波にさらわれていただろう。
考えると恐ろしい……。
本当に生きてて良かったが、本当の危険は実はその前にある。
みんな気付いているだろうか?砂浜に行く為には、道路を横切らなければならない。
ここ釜山では皆、深夜まで活動している。
よって、真夜中になっても車の通行が絶えないその道路を、正体不明になりかけた酔っ払いが
たった一人で渡っていたことの方が恐ろしいことなのだ。
一歩間違えば、MarshLandの掲示版に
「沼田さんのお通夜が雑色で6時から始まります。」
というお知らせが書き込まれていたかもしれないのだ。笑い話で済んで良かった。
この事は「沼田さん天然ウォーターベッド事件」として後世に長く語り継がれるだろう。
斉藤さんは…?
斉藤さんは海の家でそのまま寝てしまって、朝に岩崎さんが見た時は、
沼田さん役の人と抱き合って眠っていたそうだ。
私が見た時は、既に起き上がってはいたが、目覚めてはいないといった感じ。
なんだか、顔が
土色になっている。よっぽど飲んだらしい。大丈夫かな?ん?まてよ。ということは、ホテルの部屋は結局使ってないということだ。
せっかくミン君達が気を利かせてくれて、とってくれた部屋なのに!
せっかくわざわざツインの部屋にしたのに!
学生達にとって、1部屋7万ウォンは大金なのに!
それを二人とも無駄にしたなんて!
かぁ〜っ!!中澤は怒ったぞ!!!
「二人とも!ここに座りなさい!!」
土下座して反省する愛すべき酔っ払い二人
「重ねがさね申し訳ござらん」
まったく、もう。
楽しすぎるよ、ほんと……。
つづく…